バシャバシャと雑巾を洗う私達は無言で。
小池さんに気を使う余裕もない位に、私はへこんでいた。
流しで二人並んでいると、
「下駄箱まで一緒に帰る…?」
聞かれ、彼女を見ずに頷いた。
「気をつけて帰りなさい。
小池さんも、掃除手伝ってくれてありがとう。
これはお礼です」
先生は扉を閉めると、私と小池さんにいつもの飴をくれた。
それは、私だけの時間だったのに……
さっきまで暗い表情だった彼女は、頬を赤らめ「ありがとうございます」と言って緩く笑った。
それを見て、私は受け取りながらも、先生を見ることは出来なかった。
.


