夫の真剣な眼差しを見て、真彩は少し呆れた。

(…なんの話かと思ったら…
そんなの一般論でもなんでもなく、
『羽野光俊の考えていること』でしょう…)


真彩は思った。


お互い独身だった時と、結婚し子供が生まれた今では、そうそう前と同じではいられない。

お腹に生命を宿す役割のある女は特にそうだ。



理亜を生んでから、真彩の生活は育児一色になった。


最初の一ヶ月はまさに地獄。

赤ん坊は昼も夜もなく、泣き続ける。


母乳がうまく出てくれなくて、乳腺マッサージを必死でやりながらの授乳。


どうしても理亜を母乳で育てたかった。



なかなか時間も一定しなくて、真彩の体力も気力もギリギリの状態が続いていた。



それなのに…


産後一ヶ月間は、夫婦生活を控えるべきだと、病院で教わったのに。



二週間目にして、光俊は真彩を求めてきた。


出産する少し前から、マンションに滞在して出産の手伝いをしてくれていた真彩の母親が、用事があって一旦藤沢へ帰ってしまった夜のことだった。



真彩は困惑した。


悪露はだいたい終わったけれど、まだちょっと臭いがきつくて、あんまりいい状態じゃなかった。