「えっ、そりゃ、まずいよ〜」


真彩の告白に、司はハハハッと大きな笑い声を立て、オーバーに身体を折り曲げてみせた。



「それじゃ、宮古島でも元気でいてね。たまには、メールちょうだいね」



真彩が言うと、司はなぜか、一瞬ふっと駅の方角を向いた。

司の突き出た喉仏が、強調される角度。



「あのさ……」


司が真彩を見下ろし、優しい目で見つめる。



「真彩、20年後の今日、藤沢駅の中央改札で逢わないか?」


「…20年後?」



それは子供じみた儚い約束に違いなかった。


真彩はちょっと首を傾げた後にゆっくりとうなづく。




ーーー次の瞬間。


風がふわりと触れるように、司の右手がそっと真彩の頬に触れた。


司は大きな身体を屈ませ、真彩の耳元で囁くように言った。



「昨日は、自分を抑えるのが大変だったよ……

酔っ払ったら、何かしちゃいそうでビール飲むのもやめた。

子供達がいなかったらどうなってたかわかんない…真彩は昔より今の方が綺麗だから」