学校に着くと、頼人は何処にもいなかった。

高校生にもなって"四人で登校"なんて子供みたいな習慣がおかしいのかもしれないけど、私は何かが引っ掛かっていた。

そのうち来るから放っとけよ、という悠介の忠言を無視。

…この時の私はまるで何かに憑かれているかのようだった。

教室、会議室、保健室…、全部の教室を見て回る。

時計を見ると、ホームルームまで僅か十五分。残るは、屋上。

(屋上にいなかったら教室に戻ろう…行き違いになってるかもしれない。…っていうか私、なんでこんなに必死に探してるんだろう)

自分でも腑に落ちないまま、ひとりで階段を昇る。

…ただ、"なんとなく"屋上に行ってみた。

"直感"のみ。

錆びついた重い扉を開く。


──…居た。




「頼人!」


見慣れた人影に確信して近付く。…けど、何かが違う、気がした。

怠そうにフェンスに凭れ掛かる姿は、普段のアイツではないような感じだった。


「…だりー、昨日深夜番組見すぎた」

「え…」


べたり、と擬音が聞こえそうなほどに勢い良くアスファルトの上に尻餅をついた頼人。

胸元まではだけたシャツに、ドクロ型のネックレス。

ネクタイはだらしなく緩められ、腕にはじゃらじゃらと幾つものブレスが嵌められている。

傍らには、白いノートとノック式ボールペン。歌詞のようなものが書き留められていた。