「桃花、なにぽーっとしてんのさ」

学校で一番仲良しの梨央に頬をつねられる。

「え。べ、別になにもっ」

(でも、ぶっちゃけ、学校にいても塾にいても立花のこと考えちゃうんだよな)

「なーんか怪しいなぁ…。男でもできた?」

「なっ、えっ」

「え、図星?」

梨央、鋭っ!

「まじ?!誰だれ?!桃花の彼氏!」

「ちょ、声大きいよっ」

教室にいた生徒から一気に注目を浴びる。

「ごめんごめん、で、誰よ?」

「塾が一緒なんだけど…。立花って人」

「なんだー、知らない人じゃーんっ。どんな人なのさ?」

梨央は残念そうな表情を浮かべながらも聞き出しを進める。

「背が私よりも少し低くて、優しくて、かっこよくて…」

「えーっ、チビなの?最悪じゃーんっ。チビだとキスとか困らない?女がかがむ感じじゃん」

「キッ…、しないよそんな。昨日付き合い始めたばかりだしっ」

私はブンブンと手を左右に振る。

「ま、お幸せにね♪」

梨央はウィンクしながら「あ、でも」と呟いた。

「桃花がそんなにベタ惚れなら、モテるんじゃない?立花って人」