「だって俺は……――あ、こう……すけ」

慌てた様子の羽矢抖と目が合う。視線をずらせば、琴子は目を逸らした。

やはり彼女が告げたのだ。だが、責める気にはなれない。

「航介!」

重い空気に飲み込まれそうになる頃、俺の足は堪えかねて逃げ出した。

羽矢抖の声が呼ぶ自分の名。それは二度と聞きたくなかった。