俺は前からこいつが……――

全て遅すぎた。同性だから気づかぬふりをしてきたのかもしれない。

互いに彼女がいるのに、今更だ。

「よかったな」

笑みが不自然に歪んではいないだろうか。

手のひらに爪が食い込む。握りしめても、もう掴めるものは何もない。