「…駅までなら送る」


女の子も乗せて、気まずい空気が流れる車内。

女の子はやはり少し泣いていて、彼は困惑していて、私は何も出来ず。


こんな暗い朝を迎えたことなどあっただろうか。

ちらりと女の子を見てみれば、ハンカチを握りしめて俯いている。


駅に着くまで、誰も何も話さないまま。

女の子は車を降りる時、ありがとうと言って走り去ってしまった。


「ごめんな、梓」


『いいよ。気にしないで』


学校へ向かう途中、彼は疲れたようで何度も溜息を吐いた。

何とかしてあげたいけど、何も出来ない。彼と女の子の問題だ。



『頑張り過ぎないでね』



「うん。ありがとう」



車から降りて、私は彼の頬に触れた。また頑張り過ぎて、倒れちゃ嫌だよ。

小さな約束をして、彼は仕事場へ。彼の車が見えなくなるまで、手を振った。


女の子も、彼も、きっと今すごく辛いだろう。

学校でも顔を合わせることになるのだろうから、もっと辛く、気まずくなる。


早く解決するといいな。


私は教室へと走った。


花ちゃん達に聞いてもらいたい、今のこの気持ちを。