「意地悪…」


『ラブレターも届いてるよ』


彼の生徒達からと、先生達から。直接届けてくれたんだよ。段ボール一箱分。

家に着くと、私は彼を部屋に連れて行く。あの段ボール箱の中を見せる為に。


彼が驚きながら手紙を一通ずつ取り出して読み始める。私はそっと部屋を出た。


彼の入院中、家に謝りに来た人もいた。手紙を、お菓子を渡してきた人もいた。

泣きながらの人も、不安そうな顔をした人も。色んな人が彼の為に来てくれた。


よかったね、気持ちが伝わって。


時々、嗚咽する声が部屋から漏れていた。

あの手紙の量だと、まだまだ時間はかかるだろう。コーヒーの準備をして待っていよう。私はココアでも飲みながら。


彼の悩んでいたものは消えたんだ。明日からまた笑顔で学校へ行けるといいね。


冷蔵庫から、生徒達から貰ったお菓子を取り出してテーブルに置く。


手紙を読み終わったらこれを食べてもらわないと。きっとまた泣いちゃうかもしれないけどね。



またひとつ大人になった彼とまだまだ子供な私。



秋が近づいてきて、少しだけ冷たい風が窓を揺らした。