『大きくなったなぁ』


『ごめんね、梓』


2人共、悲しそうに微笑んでいた。

…あぁ、そうか。そうだった。


『私は幸せだよ。恭お兄ちゃんがいつも守ってくれて、助けてくれて…私、幸せだよ』



これは夢。私の声は出ないはずなのに、出てるから。

そしてこの2人は…。



『だから大丈夫。心配しないで』



お父さん、お母さん。幸せだから、ちゃんと笑えるから。


だから。



「梓、風邪引くぞ。ほら、起きろって」



目を開けると彼が私の頭を撫でていた。

起き上がると私にお土産としてチョコをくれた。

高そうなチョコだ、大事に食べよう。


「先に寝てて良かったのに…どうした?どっか痛いのか?」


頬を伝う涙。

手でそれを拭うと彼は何度も謝ってきた。

謝られることなんて何ひとつないよ。

私のほうこそ、ごめんなさい。



『れいぞうこ、のぞいてみて』



彼は不思議そうな顔をして冷蔵庫を開けた。

私が一生懸命作った彼のごはん。


食べてほしくて、喜ぶ顔が見たくて。