「すみません、クリスマスケーキを一つ下さい!」

「はーい!」
私はお客さんからの注文に答えた。
そして、こんな寒い日でも保冷ケースの中に手をつっこんでクリスマスケーキを一つ出した。

「1200円になります。」
お客さんはどうやら仕事終わりのサラリーマンのようだ。
「はい、ちょうどですね!ありがとうございました。メリークリスマス!」

今日な12月23日。クリスマスイブ・イブである。

これから3日間こうやって駅前でクリスマスケーキを売るのが、私の仕事。

気温は9度。寒い。とても寒い。
そんなことを思いつつ人の流れを見ていると、空から白いあれが降ってきた。

「降ってきちゃったかぁ、雪。」

「ねぇ!ケーキ一つ」

そう声をかけられた時にはビックリした。

目の前には私が未だかつて見たことのない美少年が立っているのだ。普通にそこらの芸能人よりカッコいい。

身長は180くらいで、鼻筋は通ってるし、茶髪が驚くほど似合っている。

だが、私よりは年下か?

「おねーさん?大丈夫?ケーキ欲しいんだけど。」

その言葉に気づいた私は急いでケーキを出した。

「申し訳ありませんでした。一つでよろしいですか?」

「うん!いいよ!いくら?」

「1200円になります。」

見とれそうになったが、いやもう見とれたのだが、事務的に対応した。

「1200円ね。はい。」

お金を渡された手に触れてしまい、その冷たさに驚いた。

でも、こんな日なんだから仕方のないことなんだろう。

「ちょうどですね!ありがとうございました。メリークリスマス!」

そう彼に告げたとき、

「ねぇ、名前は?」

と聞かれた。

これはあれか?俗にいうナンパか?
初めての体験に驚いたが一応名乗ることにした。

「さ、佐伯です。何かございましたでしょうか?」

「何もないよ。」

はっきり言われた。

「下の名前は?」

この人はおかしいんじゃなかろうか、と思いつつも

「千雅(ちか)です。」

と答えた。

「千雅ちゃんか、ケーキありがと。
またくるね!」

そう言って、大通りの方へ行ってしまった。

彼はさっき「またくるね!」と言ったが、本当なのだろうか?

そんなことを思っているうちに今日の分のケーキは売り尽くしてしまった。

さて、うちに帰ろう。