ロリポップ

 お風呂に入って温まった恩田君を寝室へと向かわせて、お粥を温める。

 出張から帰ってきたばかりという恩田君の冷蔵庫の中身は、ビールとミネラルウォーターが冷えてあるだけ。 
 ご飯も当然無い。
 マンション前のコンビニへ、恩田君がお風呂に入っている時に全速力で行った私。
 鮭のおにぎりと梅のおにぎりと、飲み物、プリン、ゼリーに・・・と買い込んで、再び全速力で帰って来る。
 早く帰らなくちゃって。
 だって、お風呂とかで倒れたりとかしてたら・・・って考えたら怖くて。
 私が帰って来てすぐに無事、恩田君はお風呂から出てきたけど・・・。


 おにぎりをお粥にして、のりを手で崩して乗せた。
 即席のお粥だけど、食べないよりはましだと思う。
 それを寝室へと運ぶと、熱が高いからかウトウトとしていた恩田君が目を開けた。



「大丈夫?お粥、食べられる?お粥がダメならプリンとかもあるよ?何か食べて薬、飲んだほうがいいと思う。体温計は?」


 ここに、とベッド横のチェストを開く。
 見つけた体温計を渡す。
 すぐにピピピ!と電子音がして、渡された体温計が表示する数字を見てしばらく見ていない体温に驚く。
 39・2度。
 こんな高熱、中学の時に一回出たくらいだわ・・・。
 

「39・2度もあるよ?大丈夫?やっぱり病院行ったほうが良くない?」


「大丈夫です・・・病院なら行ったって言ったでしょ・・・。父が医者なんです。帰りに実家によって薬はもらってきましたから・・・風邪、だそうです・・・。扁桃腺が小さい頃から弱くて、風邪を引くと熱がいつも高くて。大人になってからは風邪も引かなかったんですけどね・・・最近は少し忙しかったから、情けないですね・・・」


 そう言って、ははは、と力なく笑う恩田君は、やっぱりいつもの恩田君よりも弱々しくて。
 いつもみたいに私をちっとも和ませてくれない。
 心配ばかりの私。
 

「そう思うなら、早く元気になって。お薬、鞄の中?」


「はい、すみません」


 今日の恩田君はすみませんばっかりだ。


「お粥、食べられる?」


「作ってくれたんですか?」


「作ったって言うか・・・おにぎりをお粥にしただけだから。即席のお粥だけど、食べないよりはいいと思うし」


 私の言葉に頷いて、お粥を食べた後、薬を飲むと恩田君はスウッと眠ってしまった。


 私はそっと寝室を出た。