ロリポップ

 あれから三日、瀬名さんに会うことも無かった。
 
 恩田君とも瑛太とも会わなかった。
 
 唯一会ったのは林田くんで、林田君の話だと瑛太も恩田君も出張との事だった。
 
 瀬名さんの事は聞かなかったけど、きっと年末に向けてどの課も忙しいけれど、営業は更に忙しいのだろ。
 
 バタバタと林田君も正面玄関を出て行った。
 
 もちろん、友華も忙しい。
 
 私もだけど・・・。
 残業のおまけがつく忙しさに溜息をつきながら、外の寒そうに暗い空を見た。
 今にも雪が降ってきそう。
 冷たい風がオフィスのガラス窓にぶつかり、ガタガタっと小さく音を立てる。

 帰る時は雪かも・・・とまた、小さく溜息をついて手元の書類に目を戻した。


 結局全ての仕事が終わったのは8時を少し回った頃だった。
 予想は的中で、窓から見た空からはチラチラと雪が降り始めていた。
 さっさと帰ろう。
 パソコンの電源を切って、まだ仕事中の部長に挨拶をしてオフィスを出た。
 人気の少ない会社の中は昼間と違って、シン・・・としていて余計に寒く感じる。
 照明が最小限に落とされた薄暗い通路を出て、エレベーターを待つ。
 止まったエレベーターに乗ろうとして、一瞬立ち止まってしまった。
 
 開いたその中には恩田君と瀬名さんがいた。
 

「逢沢さんも残業だったんですか?」


 の声に、うん、と答えながら複雑な顔をする瀬名さんの顔が目に入る。
 何か、タイミング、悪かったよね、私・・・。
 

「あ、オフィスに忘れ物したから。ゴメン、またね」


 咄嗟にそう言ってエレベーターを降りてしまった。
 恩田君が呼んでいたけれど、なんだか振り返れなかった。

 忘れたものなんか無かったけれど、三人でエレベーターの中にいるのは気まずくて。

 薄暗い廊下はやっぱり寒かった。
 

 結局、すぐに帰るのがきがひけて、休憩室でいつものカフェオレを飲む。
 湯気の上がるカフェオレはいつもと同じで、少し甘くて、少し苦い味だった。
 
 外の雪は相変わらず降り続いているみたいだった。
 
 数日振りに見る恩田君は少し疲れた顔をしていた。

 林田君の話では出張だったらしい恩田君。
 明日は土曜日だからゆっくり休めればいいけれど・・・なんて考えながら、少し冷めたカフェオレを一気に飲んで休憩室を出た。