ロリポップ

 担当直入な質問に一瞬、動きが止まる。
 
 彼女は両手を胸の前で握り締めていた。
 力が入っているのかその指先は白く、色を失っている。
 
 彼女が恩田君を好きなのは、何となく分かっていた。
 あの、横断歩道の信号待ちの時、彼を見上げる彼女の横顔は好きな人を見つめる横顔だった。
 そんな彼女の気持ちに気が付いていないのは、想い人である恩田君だけだと思う。
 あの視線にきっと他の人だって彼女の思いは分かっているはず。
 でも、恩田君はそんな視線に気づいてない感じだった。
 さらっと彼女の質問に答えていたあの様子だと・・・・・。
 
 可愛い人、と言っていたけれど、彼女は十分に可愛い。
 恩田君を想って私にこんな質問をしてくるあたりも。



「恩田君は友達・・・かな」



「友達、ですか・・・・・」



 何だか納得していない様子の瀬名さんは、まだ、探るように私の顔を覗き込む。
 友達以外なんて言うの?
 瑛太の後輩?そうだけど、私と恩田君の関係とは少し違うし・・・やっぱり友達が一番近い表現じゃない?



「そう」



「・・・分かりました。呼び止めて済みませんでした・・・」



 そう頭を下げて、瀬名さんはクルリと私に背中を向けてエレベーターに向かって歩いて行った。
 まだ、仕事、残ってるのかな、とその背中を見ながら恩田君の事を思い出した。
 あの後も寒い中、外回りに出たのかな・・・と。






 友華とはいつも行く居酒屋さん・・・ではなく、急遽、友華の自宅に場所が変更になった。
 何でも、実家から宅配便が届くのを忘れていたから・・・らしい。
 いつもの居酒屋さんに向かっていたら電話があってそう言われた。
 だから。もっと早く連絡してよ!!
 恩田君の言ったとおり、雪は降り止んでいたけれど寒い風が頬を刺すように掠めてく。
 思わず身震いする寒さに、マフラーを口元まで引き上げて友華のマンションへ向かった。


 友華のマンションへ着いた頃には、すっかり指先も足もカチコチになるくらい冷たくなっていた。

 部屋に入って第一声の



「・・・寒かった~」


 の私の声を聞きながら、友華はクスクスと笑っていた。
 いやいや、友華のせいで余分な距離を歩かなきゃいけなかったんですけど?
 と文句の出掛かったのを、テーブルに運ばれてきた湯気の上がるシチューを見て飲み込んだ。
 

「実家からジャガイモとか玉ねぎとか沢山送ってきたから、シチューにしたの。こういう時に圧力鍋って便利よね~。短時間でできちゃうんだから」


 と最近買った圧力鍋を褒めている。
 確かに、よくテレビのCMとかでやってるの見るけど、便利そうだなって思う。


「食べるから手を洗ってきなさいよ~」


 そう言う友華がお母さんみたいだと思ったけど、言ったらきっと怒られるからやめとこう。
 とりあえず、シチューを食べ終わるまでは。