病院の待合室にも似た空間で
ぼくらは押し黙ってソファーに座っていた
柔らかすぎて
そいつに喰われているような気さえした

『○○さん』

急に名前が呼ばれた


心臓が止まりそうになった ぼくじゃなかった
隣りの隣りに座っていた人が静かに席を立ち
奥の真っ暗な空間へと吸い込まれるように歩いていった

「カッカッカッカッ」

しばらくして
奥の部屋から
さっきの人の叫び声が聞こえてきた


さっきの人のかはわからないが どう考えたってそうに決まっている
また静かになった

もう

時間がやってきたのだ


ぼくは
次に
自分の名前が呼ばれない事を必死で祈っていた




ここにいる誰もがそうだった
放送が入り ジリジリとスピーカーからノイズが聞こえ出す
そして時給800円で雇われているやる気のない女の事務員がしゃべりだした






『○○さん』