地上に降り立った 最後の天使

人々は彼女の全てを強奪し そして助かろうとした

彼女を引き裂いてでも

天使が差し延べた柔らかそうな手の平を 強く握り

もうけして放そうとはしなかった

こちら側へぐいと引き寄せた

限りない残虐の中で天使は思う

人間はもはや救うに値しない生き物になってしまっていたと

あのまま

ほかの仲間たちと共に

雲の上からただ

壊れてゆくさまを眺めていれば良かったと

わたしは愚かだったと

何処からか水滴が落ちる音が聞こえてくる

瞳を開ける力も失くし横たわったまま

ただ耳を澄ませていた

ぴちりぴちり ぴちりぴちりぴちり

ああこれは

わたしの頭の中から鳴っているのだ

力が蘇ってくる

神様ありがとう

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ





皆殺しの日がやってきた

愚かな人間どもがのたうちまわる最後の日

たかがしれた行為で抵抗を試みる

それを見ていると自然と笑みがこぼれてくる

空から複数の仲間たちが舞い降りてくる

きれいな旋律が頭に響く

ははははは
はははは

立ってもだめ

座ってもだめ

死ね

お前たちには与えられなかった

神様の力を見せてやろう

そいつをゆっくりと手の平で転がし

お前の最後の瞬間を握っているのが誰なのか教えてやろう

そのときおまえらは皆同じ顔だ

だから何とも思わず首をはねられる

その飛距離をほかの天使と競い合うことができる