「はぁ…はっ、ゼェ…」
1人の少女が駆けている。
「待て‼悪あがきはやめて、さっさと俺たちにつかまれ‼」
そして、少女を追う隊服に身を包んだ男たち。
少女は、時折うしろを振り返りながら、必死に駆けた。

ここは牢獄塔。その名の通り、牢獄として使われている塔だ。
そこで少女駆けている、つまり、脱獄しようとしていた。
(出口はどこ?どこにもないじゃない。鉄格子ばっかり…)
かれこれ1時間程、この逃走劇を繰り広げていて、少女の披露はもう極限にまで達していた。

少女はひたすら階段を降り、なんとか男たち、つまり見張りの者をまくことに成功した。
(どれくらい階段を降りただろう。ここ何階かな。この塔20階あるからな…)
無駄に高い塔にげんなりする。
「はぁーーもぅ、走れない。」
そう言いながらも立ち止まっている時間はないので、ひたすら歩いて出口を探す。
(そういえば、この塔は、上の階ほど凶悪犯だったわね。)
そんなことを思いながら、牢の中の囚人に目をやる。
(確かに、ここの囚人は私がいた18階よりは穏やかなように見えるわ。)
囚人の観察はそれまでにして、見張りの警戒と、脱獄に集中する。
そして、階段を見つけては降りて行った。

一際長い階段を降りると、そこは今までの階の雰囲気とは違っていた。
見張りはほとんどいないように見えたが、それでいて穏やかという雰囲気でもない。
今、少女がいる、その階は不自然なほどに閑散としていた。
少女は警戒をゆるめることなく、出口を探し続けた。

その階で出口を捜索して数分が経過した時、さっき少女が降りてきた階段の方から、複数の足音が聞こえてきた。
おそらく見張りの者の足音だろう。
(やば、こっちにくる⁈、早く出口を見つけなきゃ。)
少しの間歩いていたためか、少し足の痛みはなくなっていた。
駆け足で捜索を続ける。しかし、出口らしきものも階段らしきものも見つからなかった。
しかも、少女が行き着いた先は、行き止まりだった。
(最悪。どうしよう、ここで引き返したら見張りと鉢合わすかもしれないわ。)
ここまでか、と溜息をついた、
その時、
「君さ、こんなとこで何してるの?」
誰かが少女に声をかけた。