等心大〜tou･sin･dai〜

結婚後も
おそらく仕事は続けることに
なるだろうが
そのへんはハッキリ
友貴と話したワケじゃない。


今後、仕事をどうするのか
きちんと決めてから
職場に報告したい。



沢木さんを
信用してないワケじゃないけど
こういうことは
「内緒ね」と言ったって
一人に話せば広まっていくものだ。

まだ時期じゃない。
親にさえ
まだ言ってないんだから。



「あ、私来週から
　沢木じゃなくなるから」

「えっ！あ、ついに？」

「そうなの〜
　来週入籍するの」

「きゃあ〜
　おめでとうございますっ」



今まで
他人の結婚話なんて
疎ましいか興味ないかの
どっちかだったのに
ケチばっかつけてたのに
自分も結婚することになった途端
他人の結婚さえも
ものすごく嬉しいことに思える。
ゲンキンなもんだ。



「なんて苗字になるんですか？」

「松居。よろしくね」

「ついつい沢木さん、って
　呼んじゃいそう」

「あはは。慣れるまではね〜」





自分自身に余裕のないときは
他人の幸せをうらやむことしか
できなかった。

悪いとこをさがして
ケチつけることしか
できなかった。


でも
自分が幸せだと
他人の幸せを心から喜べる。



人間って
本当にエゴイストで
勝手な生き物だ。



多分そういうの
私だけじゃ、ない。


言わないだけ。
隠してるだけ。
演じてるだけ。

きっとそれが
大人になるってことなのだろう。

そしてそれを
嫌だとも最低だとも思わない私は
子供のように無邪気じゃないってこと。