等心大〜tou・sin・dai〜

「それって…」



なんて答えたらいいのか
戸惑う。

軽い気持ちで言っただけかもしれない。
深い意味なんかないのかもしれない。


私が最近、
結婚を意識してるから
深く考えすぎなだけ、
なのかもしれない。





「ぶっ…っははははっ!」


こらえきれない、というように
友貴が笑い出した。



「なっ…なんで笑うのよ」

「返事くらいしろよなぁ」

「だって…」

「せっかく勇気出して
 言ったのにさ」

「えっ…」





“勇気出して言ったのにさ”




そのあとに続く言葉。

期待してる。

鼓動が速くなる。
友貴にも聞こえるくらいに。


「目、つぶって」

「えっ…なんで?」

「いいから」

「…うん」


目をつぶる。

どういうことなのか
もうハッキリとわかる。



「目、開けて」



ゆっくり瞼を上げると
目の前に
グレーのケースに入った
指輪が置いてあった。






「結婚しようか」





優しく言った、友貴の言葉に
私は不覚にも泣いてしまった。


私はいつでも
クールなはずだったのに。


こんなありきたりな
シチュエーションで泣くなんて。



でも
なんか感動したの。

本当に
嬉しかったの。



――私、この人と
    幸せになってみせます。




友貴は
私の左手の薬指に
そのエンゲージリングをはめ
私を抱きしめた。



「幸せに、するから」




私の目からはとめどなく
温かい涙が溢れる。


それは
うれしい、優しい涙だった。