「ここだよ」

車を停めると
億ションのような建物が
目の前にあった。



もしかして想像以上の
セレブなのかもしれない。


マンションの地下駐車場に
入っていく。


車をおりて
エレベーターに乗ったら
緊張がMAXになった。




――もう引き返せない。




何をいまさら、と
自分に言い聞かせる。


初めての相手との情事は
いつでも緊張するものだ。
バージンでもないのに。




部屋は7階だった。


「はい、どうぞ」

鍵を開け、大川さんが言った。

「おじゃまします」

ひとり暮らしとは思えない
すごいマンション。


玄関も広い。


「ひとり暮らしなのに
 すごいキレイにしてるね」

「あぁ
 ハウスキーパーがいるから」



ハウスキーパー…

一瞬
『この人と結婚したら
掃除しなくていいんだ』
って思った。


やっぱり大川さんて
ポイント高い。




「ワインにする?
 それとも他のに変える?」

冷蔵庫を開けながら
大川さんが聞いてくる。

「私、同じのでいい」

と言うと
大川さんは

「うーん。でも僕は
 ビールにするんだけど」

と答えた。


そっか。
大川さんはさっき
アルコール飲んでないんだっけ。

私はワイン飲んだから
ビールはちょっとキツイかも。



「じゃあワインもらおうかな」

「了解。赤でいい?」

「うん」




ソファーに座って
窓から外を見た。

ネオンがきれい。



大川さんがテーブルに
グラスとワインを置く。

「じゃあ飲み直そう」

そう言って
グラスにワインを注いでくれた。


そして缶ビールを
プシュッと開け

「乾杯」

とかるく缶を持ち上げた。


「乾杯」

私もグラスを持ち上げる。



しばらく無言で
外の景色を見ながら
飲んでいた。


先に口を開いたのは
大川さんだった。