等心大〜tou・sin・dai〜

たとえ叶わなかったとしても
恋愛によって得ることはある、と
言う人もいるけど
おそらくソレは
私にはあてはまらない。



過去の恋人を思い返すと
“バカな男達だったなぁ”
という感想しかない。



ただ単に私の
男を見る目がなかっただけの
話かもしれないけど。






…なんて
想い出にひたったりしてたら
ケータイが鳴った。




――友貴だ。

迷ったけど
とりあえず出た。


「もしもし」

『あ、おはよう。
 今日遅番だろ?』

「そーだけど…なんで?」

『昼飯、外で食わない?』



どうしよう。
大川さんに見られたら困る。
正直まだ
どっちもキープしておきたい。


「ごめーん。今日ムリだぁ」

『そっか、わかった。
 また今度な』

「うん、ホントごめん」

『いいよ。じゃあな』





――やっぱり私
友貴より大川さんを
とるつもりなのかもしれない。

こういうとき
とっさに出る態度や言葉が
意外と自分の本心だったりする。



ケータイのメモリーから
登録したばかりの
大川さんの番号を探す。


かけようか。
でも何を話す?

…話題はこの際、
なんでもいいか。
とりあえずかけてみよう。



発信ボタンを押した。

プルルルル…
呼び出し音が鳴る。
これだけで、ドキドキする。



プルルルル…プルルルル…



出ないかな、と
切ろうとした瞬間


ブッ…
『もしもし大川です』




――出た。

鼓動が強く、早くなる。


「あっ…西村です」


私のばかばか。
もっとうまく挨拶したかったのに。


期待どおり、
明るい声が返ってきた。

『西村さん!うれしいなぁ〜
 土曜が楽しみで
 昨夜は眠れませんでしたよ』


――私も。

私もそうでした。
でも、それは言わない。
まだ時期じゃない。