等心大〜tou・sin・dai〜

「誰かと待ち合わせですか?」

「あ、いいえっ。
 たんなる暇つぶしで…」

「じゃあ、いいかな?」

彼は私の
目の前に座った。




「あ、そうだ。
 僕の名前言ってないですよね」

「あ、はい」

「僕、大川といいます」

そう言って
私に名刺を差し出した。



『大川ビル株式会社 取締役
  大川誠』





――とりしまりやく。

「すごいですね!
 ビル持ってらっしゃるんですか」

「いやいや、二代目ですよ」



二代目でも
雇われて働く人とは
大違いだ。

「よかったらこれから
 食事でもどうかな?」

「えっ…
 は、はいっ。喜んで!」



信じられない。
こんなシンデレラストーリーが
実際に起こるなんて。



「じゃあ行きましょうか。
 何が好きかな?」

「私はなんでも。
 嫌いな物ないですから」

「ははは
 好き嫌いのない人、
 僕は好きです」




どうしよう。
私なんかドキドキしてる。
いや、別に
悪いことじゃないけど
ちょっとだけ
友貴に罪悪感。




「知らない男の車に乗るのは
 不安でしょうから
 タクシーで行きましょう」


紳士だ…
こんな大人のエチケットのある人
初めてかも。
カンドー。



外に出て
タクシーをひろい
二人で乗り込むと

「赤坂まで」

と大川さんが
運転手に告げた。