――痛い…
陣痛が始まったんだ。
ナースコールを押して
報告をすると
すぐに看護師さんが来てくれた。
「まだまだかな」
「…はい」
「自分で産むのは辛いと思うけど
次のお産のことを考えると
帝王切開よりも下から産んだ方がいいから…がんばりましょうね」
次のお産?
次なんて…ない。
友奈は小さいけど、友奈で
この世にたった一人で
次とか、そんなんじゃない。
「痛いよ…」
痛みはどんどん強くなる。
友奈はいなくなってしまうのに
どうしてこんなに
私は痛い想いをしなければいけないの?
私は
一人ぼっちになるのに。
痛いよ。
怖いよ。
「…友貴」
辛い時に呟いた言葉は
母の名前でも、父の名前でもなかった。
友貴。
友貴。
いなくなっちゃうよ。
私の赤ちゃん
いなくなっちゃうんだよ。
こんなに痛くて
こんなに辛くて
こんなにも愛おしいのに
友奈は一人で
天国にいっちゃうんだよ。
まだこんなに小さいのに
たった一人で。
友貴。
神様なんて本当にいるのかな。
いたとしたら
どうして友奈を連れて逝ってしまうんだろう。


