等心大〜tou・sin・dai〜

「陣痛誘発剤を投与しますね」




ただ、呆然としていた。

窓の外を見ていたけど
風景も、音も、何もかも
私の心には入ってこない。



「彩、少し食べておいたら?」

「いい」



食欲なんて湧かない。

食べるという行為は
命を紡ぐ行為だ。

私の中の命が
消えようとしているのに
どうして
私自身が生きているのだろう。




「一人にして」

「でも…」

「お願いだから」




母は静かに
部屋から出て行った。




お腹の中で
友奈はまだ
微かに動いている。



生きてる。
まだ、生きてるんだ。




涙が溢れてきて
声を押し殺して、泣いた。



ねぇ
どこにもいかないでよ。
一人にしないでよ。
私、頑張るから。

頑張って
強くなるから。
もう泣かないから。



ねぇ友奈。
私にあなたの
泣き声を聞かせてよ。