等心大〜tou･sin･dai〜

一瞬
“そんなことも知らないの？”
って顔して

でも答えてくれた。



「そっか、
　西村さん実家だもんね。
　生活費、今いくら入れてるの？」

「…お恥ずかしながら
　１円も実家に入れてなくて」

「えぇぇっ！」





そんなに
驚かれることだったんだ。

急激に
恥ずかしくなってきた…。



「ごめんね、
　そんな驚くなって感じだよね」

「い、いえ…」

「結婚ってさぁ、現実だよね。
　生活そのもの。
　家賃に食費。光熱費に雑費。
　そのほかにも
　税金とかいろいろあるしさぁ｣



そっか。
純粋に生活に
使う分だけじゃないのね。


「それに電化製品なんかは
　一生モノじゃないしね。
　子供ができたら
　育児の他にも教育費もかかるし
　貯金もしなきゃだし」



私の収入と友貴の収入、
足したらいくらに
なるんだっけ。

頭の中で
すばやく暗算。



「あ、ごめんね〜
　まだ結婚前の西村さんに
　こんな夢のないこと言って」

「あ、いえ
　勉強になりました」

「あはは
　それならよかったけど」




お客さんがきて
沢木さんは離れていった。



なんだか
テンションが微妙に下がる。

実際のところ、
いくらあれば
生活ができるんだろうか。



『結婚は生活そのもの』



その言葉
ズシン、ときた。


本当にそうかもしれない。
夢物語とは違うんだ。

なんだか
自信がなくなってゆく。





――私が主婦に
なれるんだろうか。

月々の給料だって
まるまる使ってしまっている。
やりくりなんてできるの？
今みたいに
自由にお金使えなくなって
我慢できる？
生活が成り立つの？






――わからない。