その日は朝から雨が降っていた。


私はいつものように
家の中を掃除してみたり
気分転換に近所の本屋を覗いたり
のんびりと過ごした。



一時期、何もしたくなくて
こもりっきりだったけど
最近はわりと外に出たりして
楽しんで過ごせてる。



何もしていないと
友貴のことばかり考えちゃうから
あえて前向きになろうとしてるのかもしれない。
じっとなんて、していられない。




家から駅まで
歩くと20分くらいだ。

結構いい運動になるので
雨だったけど私は駅まで
買い物に行くことにした。


この前買ったばかりの
レインブーツは
シンプルだけどオシャレで
雨の日のおでかけが好きになった。



駅までのんびり歩くと
ほどよい疲れを感じる。


私は駅に着くと
まずスタバに入って
温かいコーヒーを飲んだ。


窓際の席に座り
ガラス越しに外を見つめる。

雨が降ってる日は
外を見るのが結構好きだ。

ガラス一枚隔てた場所。
外は濡れているけれど
私は濡れない、という安心感。

窓に守られてる感じがするから
雨の日は
中から外を見つめる。




たくさんの人達。



その中に
見慣れた、後ろ姿があった。





――友貴。





息が止まりそうだった。

私は
友貴の後ろ姿さえも、愛しい。




振り向かないで。
気付かないで。

そう祈る反面、
友貴の顔が見たい、とも思った。



声が聞きたい。
触れたい。

友貴の視界に
私を映して欲しい。



心臓が押し潰されるほど
切なくて
私は涙を流していた。





友貴は
振り向かなかった。