お風呂に入り
夕食の用意の整ったテーブルにつくと
父が帰ってきた。
「おかえりなさい」
「あぁ」
相変わらず父はそっけない。
それでもさっき聞いた話のせいか
父の温かさを感じるから不思議だ。
人は見方によって
どうにでもなるのかもしれない。
「彩、今日健診だったのよ」
母が父にご飯をよそいながら
そう言うと
父は私の方をチラッと見てから
「どうだったんだ」
と言った。
対抗するかのように
私もそっけなく返事をする。
「順調。
赤ちゃん、女の子だって」
いつものように「そうか」と
返ってくるかと思ったら
父の表情がパァッと明るくなった。
「女か!
そうかそうか、女か〜」
そんな父を見て
母と私は同時に吹き出した。
声を噛みころして笑う私達を
父は不機嫌そうに見た。
「何がおかしいんだ」
「ううん、おかしいんじゃなくて
嬉しいだけ」
私の言葉に照れたのか
父は箸を動かし始める。
お腹の子も嬉しいのか
ポコポコと動いた。
しばらく無言だったが
父がおもむろに口を開く。
「名前も考えておかないとな」
「あ…名前はね、もう決めたの」
私はひそかに考えていた名前を
口にした。
「友達の“友”に
奈良の“奈”で…ユナ」
――友奈。
実際に声に出すと
名前が命を持った気がした。
「かわいい、いい名前ね」
「…そうだな」
「ありがとう…」
母がお腹に向かって話しかける。
「友奈ちゃん、
会えるのが楽しみね」
赤ちゃん――友奈は、
またポコン、とお腹を蹴った。
夕食の用意の整ったテーブルにつくと
父が帰ってきた。
「おかえりなさい」
「あぁ」
相変わらず父はそっけない。
それでもさっき聞いた話のせいか
父の温かさを感じるから不思議だ。
人は見方によって
どうにでもなるのかもしれない。
「彩、今日健診だったのよ」
母が父にご飯をよそいながら
そう言うと
父は私の方をチラッと見てから
「どうだったんだ」
と言った。
対抗するかのように
私もそっけなく返事をする。
「順調。
赤ちゃん、女の子だって」
いつものように「そうか」と
返ってくるかと思ったら
父の表情がパァッと明るくなった。
「女か!
そうかそうか、女か〜」
そんな父を見て
母と私は同時に吹き出した。
声を噛みころして笑う私達を
父は不機嫌そうに見た。
「何がおかしいんだ」
「ううん、おかしいんじゃなくて
嬉しいだけ」
私の言葉に照れたのか
父は箸を動かし始める。
お腹の子も嬉しいのか
ポコポコと動いた。
しばらく無言だったが
父がおもむろに口を開く。
「名前も考えておかないとな」
「あ…名前はね、もう決めたの」
私はひそかに考えていた名前を
口にした。
「友達の“友”に
奈良の“奈”で…ユナ」
――友奈。
実際に声に出すと
名前が命を持った気がした。
「かわいい、いい名前ね」
「…そうだな」
「ありがとう…」
母がお腹に向かって話しかける。
「友奈ちゃん、
会えるのが楽しみね」
赤ちゃん――友奈は、
またポコン、とお腹を蹴った。


