等心大〜tou・sin・dai〜

「一人で育てていく。
 もう決めたの」



私は両親の顔を
しっかり見すえて言った。

「彩…
 どんなにそれが大変なことか
 あなたわかってないのよ」

「わかってる」

「あなたは兄弟がいないから
 子育てがどんなに大変か
 全然わかってないわ」

「大変でも、かまわない」

「そんな簡単に決めることじゃないわ」


母の言葉にカッとなり
つい声を荒げた。




「簡単になんて決めてない!」





シーンと静まり
テーブルの上の料理だけが
温かい湯気を漂わせていた。

そのことが
私を余計に哀しくさせる。



母が泣くことは
予想済みだった。

母は心配してくれてるのだ。
わかってる。
親不孝なことをしてるって。
わかってる。



でももう決めたことだ。
時間を戻すことはできないし
人生をやり直すこともできない。
突き進むことしか、できない。


きっと私は
こんな風にしか生きられない。

わざわざ
苦労するであろう道を選んで
誰かを傷つけて
それでも前に進んでいく。