等心大〜tou・sin・dai〜

――かわいい。




自分でも驚くくらい自然に、
そんな感情が溢れでてきた。





この子に、会いたい。





「では下着をつけて下さい」



身支度をし、
先生の前の椅子に座る。


「ご家族の方は?
 いらっしゃってる?」


一瞬迷ったけど
「はい」と返事をしてしまった。
それを聞くとすぐに
看護師さんが待合室に呼びかけた。



「西村さんのご家族の方、
 どうぞ」

「あっ、はい!」



友貴が照れくさそうな面持ちで
私の隣に来た。

先生は
友貴と私を交互に見ながら

「まだ確定できないけど
 出産予定日は来年の七月半ばくらいですよ」

と言った。

友貴は
パァッと嬉しそうな顔をした。
その顔を見て胸がチクンと痛む。

「え…
 じゃあ妊娠してるんですね?!」

「えぇ。
 体に気をつけて下さいね。
 あ、これは赤ちゃんの写真」

「あっ…
 ありがとうございます!」


友貴は深々と頭を下げて
愛おしそうに
その豆つぶのような
エコー写真を見つめた。




あぁ。
この人の子だったら
どんなにいいだろう。



私の父も
母のお腹に私がいるとわかった時、喜んだのだろうか。
嬉しかったのだろうか。


そんなはず、ないか。

友貴に父の姿を重ねるなんて。




でも私
嬉しい、って思った。

あんなに悩んでたのに。



この子に会いたい、って
強く思うの。



子供なんて嫌いだったし
まだ欲しくないって思ってた。

なによりも
幸せが壊れるのが怖かった。
友貴を失いたくなかった。



でもそんな気持ちは
吹っ飛んだよ。




私、この子を産みたい。



きっと
お母さんになれる。