近所にある総合病院の
産婦人科の待合室は
思いのほか混んでいた。
お腹の大きい妊婦さん。
仲の良さそうな夫婦。
小さな子供。
幸せな優しい空気に包まれて
私は自分だけ場違いな気がした。
居心地が悪い。
友貴は私の隣で
ソワソワと落ち着かない。
「西村さん」
看護師さんの呼ぶ声に
一瞬身を固くする。
――もう逃げられない。
「はい」
「こちらへどうぞ」
友貴の顔を見ると
安心させようとしたのか
微笑んだ。
つられて私も微笑み返す。
看護師さんの後について
診察室へ入ると
中年の優しそうな女の先生で
私は少しホッとした。
「えーと、西村彩さん」
「はい」
「じゃあそちらの台に上がって下さい」
話に聞いたことはあるけど
初めて見る内診台に
ちょっとひるむ。
「下着はとって下さいね」
のろのろと準備をし
台に上がる。
まるで死刑台にあがる気分。
いくら相手が女医さんだといえ
泣きたい気持ちになった。
ヒヤッとした器具の感触。
なにもかもが、怖い。
一秒が何分にも感じる。
固く目をつむって
早く終わることをただ祈った。
「えーと…見てみますか?」
こう聞くということは
妊娠してる、ということなのだろう。
どんな結論を出すにせよ
きちんと見ておきたい。
私のカラダ。
私のコドモ。
「…はい」
先生はモニターの画面を
こっちへ向けた。
「この動いてるの、わかる?」
豆つぶみたいなものが
たしかに動いてる。
「あ…はい」
「これが赤ちゃんの心臓ですよ」
心臓。
一生懸命、動いてる。
まだ人の形なんてしていない。
だけど動いてる。
生きてる。
私の中に息づく、命。
産婦人科の待合室は
思いのほか混んでいた。
お腹の大きい妊婦さん。
仲の良さそうな夫婦。
小さな子供。
幸せな優しい空気に包まれて
私は自分だけ場違いな気がした。
居心地が悪い。
友貴は私の隣で
ソワソワと落ち着かない。
「西村さん」
看護師さんの呼ぶ声に
一瞬身を固くする。
――もう逃げられない。
「はい」
「こちらへどうぞ」
友貴の顔を見ると
安心させようとしたのか
微笑んだ。
つられて私も微笑み返す。
看護師さんの後について
診察室へ入ると
中年の優しそうな女の先生で
私は少しホッとした。
「えーと、西村彩さん」
「はい」
「じゃあそちらの台に上がって下さい」
話に聞いたことはあるけど
初めて見る内診台に
ちょっとひるむ。
「下着はとって下さいね」
のろのろと準備をし
台に上がる。
まるで死刑台にあがる気分。
いくら相手が女医さんだといえ
泣きたい気持ちになった。
ヒヤッとした器具の感触。
なにもかもが、怖い。
一秒が何分にも感じる。
固く目をつむって
早く終わることをただ祈った。
「えーと…見てみますか?」
こう聞くということは
妊娠してる、ということなのだろう。
どんな結論を出すにせよ
きちんと見ておきたい。
私のカラダ。
私のコドモ。
「…はい」
先生はモニターの画面を
こっちへ向けた。
「この動いてるの、わかる?」
豆つぶみたいなものが
たしかに動いてる。
「あ…はい」
「これが赤ちゃんの心臓ですよ」
心臓。
一生懸命、動いてる。
まだ人の形なんてしていない。
だけど動いてる。
生きてる。
私の中に息づく、命。


