衝動的な短編集ですけど何か?


「友希、床にこぼれてるジュース一滴残らず拭け」

「…」

「返事は?」

「……はい」


苦しそうな演技をやめ、口元を覆っていた手をどける友希。心太も彼をさすっていた手をどけた。


「それで、そのTシャツ、弁償ね」

「…っ! そ、そんなぁっ!美人で優しいお母様っ!」


子どもにとって残酷な言葉を吐いた母に友希は必死になって煽てる。しかし、それは効果がなかった。

彼女は相変わらず冷たい目を向けると一言。


「いくら今日がエイプリールフールだからって、Tシャツ汚してアタシが許すとでも?」

「……」


友希はショックで、まるで現実逃避するように膝を丸める。母親は自業自得だとでもいうようにフンッと鼻で笑うと、彼の部屋を後にした。

そして残されたふたりは。


「…にーちゃん、次は気をつけよーねっ!」


にへらと無邪気に笑む心太にコクコクと何度も頷いた。

友希と心太はまだ小学生。どうやら彼らにはやめるという選択肢がないらしい。


【END】