「…ぼ、僕達のお母様は、び、美人で、優しくて、完璧で、す。そんなお母様に逆らって、ふ、深く、反省していま、す」

「…………チッ、最初からこんなことしなきゃいいものの。次やったらこれ、ゴミ箱行きだかんね」


お母様、見事な棒読みでそう言った、否言わされた彼に母は睨みつける。


「友希、返事は?」

「は、はいっ!」


ちゃんとそれに答えると、ようやく母親から解放された友希。すると必然的に彼女の目は弟の心太に向かう。


「…それで、心太は?」

「……あ、えっと、ごめんなさい」


ペコリと素直に頭を下げた彼はどうやら許してもらえたらしい。


「今度からはお兄ちゃんが何か言ってもちゃんと聞きにきなよ」

「…はぁい」


しょぼんとした心太とうーっと唸る友希にため息をついた彼女は、彼らの煙草によく似たお菓子を没収。


「…ったく、このクソ忙しい朝に馬鹿なことしてんじゃねぇよ。こっちは店の準備で大変だっつぅの」


母親の発言で分かるとおり、友希と心太の家は自営業である。母は自身の髪をクシャリとすると、ふたりを上から見下して言葉を放った。


「早く学校行く用意しな。遅刻でもしたらぶっとばすよ」


その恐ろしい声により、慌てて友希と心太は家に駆け込んだ。


そう、このふたりはまだまだ頭の中が好奇心でいっぱいの小学生である。


【END】