「……うるせぇな。見ればわかんだろ。煙草吸ってんだよ」


チッと舌打ちを漏らした彼に女の纏う空気が変化した。それを敏感に感じ取った心太はビクリと震える。


「…あ? お前それ、誰にむかって言ってんの?」


彼女はカツカツと足音をたてて友希に近付き、ゴツンと鈍い音をたて拳を彼の頭に突き落とした。


「…っ、いってぇえっ!」

「で、誰にそんな口利いてんだ? 小僧」


ポロリと煙草を落とし、頭を抱える友希の胸ぐらを無遠慮に掴んだ女は凄む。心太はもはや涙目である。


「……う、あ、そ、そんなの…ババアに決まって…」

「これなーんだ」


たじたじになりながらまだ反抗しようとする友希。そんな彼ににっこり、黒い笑みを浮かべて空いている手をみせる女。

それを見た友希はサーッと血の気が引いた。


「そ、それは…っ、俺が昨日買ってもらったゲームソフトっ!」

「そう。………態度の悪いヤツにこんなもん必要ないよな?あ?」


笑顔のまま言うからか、先程よりも迫力がある。友希はソフトを前にして反抗することを諦めた。


「………ごめん、な、さい」

「ふーん、それで?」


冷めた視線を浴びせる彼女に、うっ、と言葉に詰まった友希は目を少しの間泳がせたが、決意したような顔をして発する。