「あ、ところで先生、ハゲるハゲないは置いといてさ」

「お前から持ち出したくせに置いとくのかよ」

「もうそれはいーのっ!」

「そうか。じゃあ将来ハゲるんだな、てかハゲろ」

「あたしハゲたくないしっ!」


(というより今の発言教師がしちゃ駄目でしょっ!)


「ハッ、………いやいやそんなことより」


ふぅ、と息を吐き出して笹倉のペースに完全にのせられる前に、なんとか落ち着きを取り戻そうとする彼女。

それに笹倉は何か変なものを見るような目を向けていた。


「せんせっ!」


それを気にすることなくズイッと顔を彼に近づけると、笹倉はそれを避けるように後ろに下がる。


「……なんだよ」

「何でさっき叩いたのっ!? おこなの?って聞いただけなのにっ!」

「…お前、そのおこってヤツ、どういう意味だ?」


ジッと自分を見下す視線に亜子は目を泳がせながらポツリ呟く。


「そりゃあ、怒ってるの?って…」

「違うな」


彼は即座に否定すると口元を歪め、言った。


「それ、古文で馬鹿って意味。峯、知ってて使っただろ」


その言葉に目を見開き口を開け、まさに間抜け面という顔をしている彼女は呆然とした様子で笹倉を凝視した。


「なにゆえに気付いたでございまするか…!」


驚きのあまり可笑しな日本語を使うがそれを彼はハンッと鼻で笑う。


「お前のパターンなんてたかがしれてんだよ。それに俺、数学より国語とか古典の方が得意だしな、当たり前だろ」


さらりと言い放つ笹倉だが亜子からしてみれば今のは衝撃発言だ。