結婚式ウラ話。


圭と麻美がドレスを発注した。

ほんとにたまたまだった。

麻美の従兄弟がブライダル専門のドレスレンタルをしていて。


たまたま。

これまたたまたま新作のドレスを発注したばかりで。

それがまたまたたまたま。

ナナが雑誌で見たドレスだった。


買取を希望し、手にした時。

翔太は度重なる偶然に驚くよりも軽く引いた。


なんでだ?

なぜこうもトントン拍子に話が進む?


正に結婚の話をしたばかりだった。
彼氏彼女、でいても夫婦でいても、形は同じ。
出来るなら責任ある立場に立ちたかった。

ナナを護る、立場に居たかった。


リングを頼み予定より早く手にすることが出来た。

あとはサプライズをかけるだけ。


週中、母親に電話をした。

「あ、母さん。俺、結婚するよ。」


あっけらかんとした報告に親はもちろん、兄や妹は絶句した。


サプライズ前に会わせようか、とも考えたが、ナナの性格上、後にした方が良さそうだったから、やめにした。



ドレスを着たナナは美しかった。

やばい、脱がせたい。いや、押し倒して思うがまま…とか考えたが踏みとどまった。
圭史の目がある。

敵にはしたくなかった。

式の最中、気になることがあった。



何故か参列者の中に、営業課の高木が居た。

あいつ、ナナを狙ってたからな。

なんで来たんだろ。



と、思っていたら。

誓いのキスの最中、ちらりと横目に彩とキスをする高木の姿が見えた。


…そういう事か。

幸せになれよ、お前らも。

ブーケを受け取った山本がはにかむ。

柔らかい表情でその山本を見つめる高木。


沢渡の横に杏。


圭史のよこに麻美。


みんな、みんな。



幸せになれよ。


願わずにはいられないほど、幸せな時間。