しばらくして、2人を取り巻く噂話は落ち着いた。
井村が公言したのもあって、周りはわりと好意的にとってくれているらしい。


今現在は、オンオフの切り替えが上手い2人が周りに気を使われない様に上手に振舞っている状態。


部長には「仕事に影響なければOK」と言われたので、ナナと話し合っていくつかルールを決めた。

名前の呼び方はもちろん、仕事上失敗があれば叱られる。


そんなある日。



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「ナナ!」

不貞腐れて呼び掛けに答えないナナを追いかける。

仕事が終わり、今日は週末ということもあって帰りに圭のうちに寄る約束になっていた。

それなのに。

「もう、知らない!」
「ナナ、だからあれはお前の勘違いだって言ってるだろ⁉」

なかなか待ち合わせ場所に来ないと思ったら、海外事業部の綺麗な女の人に誘われていた。

「何が勘違い⁈しな垂れかかったあの人、翔太さんにキスしようとしてたじゃない!」


目撃してしまってカッとなって、貰ったばかりの指輪を外し投げつけたのだ。

「俺はお前じゃなきゃ嫌なんだって言っただろ⁉」
「嘘ばっかり!にやけて嬉しそうにしてた!」

歩きながら文句の言い合い。

こんな喧嘩は日常茶飯事だった。

お互いに嫉妬深いのだ。

「俺の話を聞けって!」

「嫌!」

ぐいっと腕を掴まれ引き寄せられる。


強引に振り向かされて噛み付くように口付けられた。

「ナナ。お前だけだ。嘘じゃない、何回言ったと思ってる?愛してるって本気で思って言葉にしたのはナナ、お前だけなんだ。信じろ。」


わかっているのだ。ホントにそうなのだという事は。

ただ現実がああだと。

ポロポロと涙を零し悔しそうに泣くナナを抱きしめる。

「だってっ、翔太さんはあたしの、なのにっ、あの人あたしを見て鼻で笑ってキスしようとしたっ、翔太さんはあたしの、なのにっ」

泣きじゃくるナナの背中をゆっくりと撫でる。

左手を持ち上げ、薬指にもう一度指輪をはめる。

「だったら尚更これは外せないだろ。俺がお前にやったんだよ。外したらお前は俺の女じゃなくなるだろ。ちゃんと付けとけ。」


コクンと素直に頷くナナの頭を撫でる。


「他の女じゃダメなんだよ。お前がいいんだ。だから、浮気なんて絶対に無いから。信じろ。…っていうか、疑ったよな。今晩覚えてろよ。」

ガバッと顔を上げたナナにニヤッとわらいかける。

「腰が立たなくなるまでしてやるからな。」



爆弾を投下されてしまった。


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