「黙ってて、ごめんね」


と言った香澄の目から、涙が零れ落ちていく。


「ごめん、私も。香澄が何か悩んでるのわかってたのに、聞いてあげられなくて、ごめんね」


悪いのは香澄じゃない。


香澄の変化に気づいていながら、聞き出してあげられなかった私はもっと悪い。香澄は私に打ち明けるタイミングを探して、思い悩んでいたのだから。


それなのに私は半ば意地になって、香澄から話してくれるのを待っていただけ。ひとりでイライラして、腹を立てていたのかもしれない。


だったら、もっと早く……


たとえ私自身の気持ちを上手く言葉に言い表すことができなくても、香澄が話し出しやすいように何かしら声を掛けてあげるべきだった。


香澄が私の手を取り、両手で握り締めた。


後悔と反省に満ちていた胸に、一筋の光が射し込んでくる。温かく柔らかな光に包まれてく。