「妹尾さん……麻衣ちゃんね」


曽我部さんはちゃんと聞き取ってくれて、私の名前を呼んでくれた。


ぎゅうっと胸が締め付けられて、名前を呼ばれたことが恥ずかしくて、顔が急激に熱を帯び始める。


慌てて目を逸らしたけど手遅れで、何とか顔を隠したくて頭を下げるしかなかった。


「ここでいいです、家近いので、ありがとうございました」


「あ、そうなの? ほんとに近いんだね、気をつけて……お大事にね」


訝しむ訳でもなく、穏やかな声が頭上から降ってくる。差し出されたバッグを受け取った私は、彼の顔も見ないで一目散に逃げ帰った。


胸がドキドキして止まない。


頭がくらくらするのは、本気で熱が出てきたからかもしれない。