坂代駅で電車を降りて改札口に近づくにつれて、私たちは無口になっていく。あの日からずっと、こんな感じ。


いつも改札口の手前で私が香澄の半歩前を歩き、窓口から一番遠い自動改札機を通る。香澄は私の半歩後ろから、隣の自動改札機を通る。


定期券を手に取って改札口に翳すために引っ張ったら、定期券に繋げたキーホルダーが他のキーホルダーに絡まった。


焦って、バッグを抱える。
絡みついたキーホルダーにぶら下がった定期券を、改札機に翳そうとして。


すぐ隣の改札機を、香澄がゆっくりと通り過ぎていく。その向こう側に窓口が見えて、諏訪さんが立っている。


諏訪さんが柔らかな笑みを送った先で、改札機を通り抜けた香澄が小さく会釈したのが見えた。


胸がじんと痛む。


やっぱり、私には無理かもしれない。
気にしないでいるなんて。