高校までは駅から歩いて十分ほどの距離。住宅街の中、緩やかな坂道を登っていく。


駅を出てしばらくの間、私たちの会話は途切れていた。香澄は話し出そうとしないし、私も話し出せずに。


昨日と同じような空気が漂ってる。


話し出すのは香澄からじゃなくてもいい。私から話し出してもいいんだけど、何を話せばいいのか思いつかない。


なんだろう。
このぎこちない感覚は。


五分ほど歩いた頃、ようやく香澄が口を開いた。


「この坂道、今日はすごくしんどいかも……」


振り向いた香澄と目が合った。
せめて、先に笑ってみせる。


「うん、私も。夏休みで体力落ちたのかなあ?」

「かもしれない、そのうち慣れるかな」


香澄が笑って返す。


その後は会話が途切れないように意識しながら学校へと向かったけど、胸の中では何かが燻ってる。


こんな気持ちは初めてだった。