昔から俺は不器用で、何の取り柄もなくて。
怒りを物や人にぶつけてた。

そんな俺を変えてくれたのは、あいつ
浅香みのり。

中3のとき、みのりは俺の隣に引っ越してきた
馬鹿みたいに明るくて、正直いうと苦手なタイプだった。

「あんた、同じ学校でしょ?一緒に行ってよ!学校。」

「は?」
なにいってんだって思った。
「学校への道、知らないの。」
いつもなら断るけど
勢いに負けた。

学校までの道のり、みのりは喋り続けた。
家族のこと、前の学校のこと…

「ねえ、あんたも喋りなさいよ!」
「あんたじゃねえよ、山口源太。」
「源ちゃんね!」
「やめろよ。」
「いいじゃ~ん」
こんな話をしながら学校についた。
皆、俺らをみる。
そうだろうな、馬鹿で学校を休みがちな男と知らない女が歩いてんだから。

みのりは職員室に入っていった。
俺は教室にいった。
クラスに入ると教室が静まった。
「来ちゃったよ」
皆、そう思ってるんだ。

ーチャイムが鳴るー
「転入生紹介するぞー」
クラスがざわつく。
「浅香みのりさんだ!仲良くしろよ」
「よろしくね!」
みのりは笑顔でそう言った。

明るいみのりはすぐにクラスに馴染んだ。
俺は、学校に行かなくなった。
高校に行くつもりもなかったし。
家でうだうだするか、
友達と遊ぶか。

俺はどんどんダメになっていく。
将来なんか考えたくない…

そのとき、母さんに呼ばれた。
「みのりちゃんよ。はやく出なさい!」
みのり…?
なんだよ…
「なんだよ」

「源ちゃんさ、学校来なよ。」
みのりのわりに真面目だな。
「行かねえ。お前に関係ない。」
「理由があるんでしょ?」
「つまんねーし、みんな俺がいない方がいいだろ?いいから、帰れ。」
はやく、帰ってくれよ…
みのりをみると自分が惨めになる。
「私、隣の家でしょ?ご近所さんなのに、まだお互いに何も知らない。寂しくない?」

「べつに…」
「私は、源ちゃんと仲良くしたい。」
まっすぐな目でみのりは言った。
「意味わかんねえし」
「なにか辛いことがあるなら教えて!私、源ちゃんの悲しい目を変えてあげたい。」

こいつ、なんなんだよ。
いきなり…馬鹿だろ。
俺なんかのために…

俺は涙を流してた。
あまのじゃくで素直になれない自分をやっと捨てられそうだった。