「おまっ……!」
「……………………。」
私の唇の数センチ横に、
有紗は触れるだけのキスを落とした。
え?ちょっと……待って?
自分の身に何が起こったのか、理解するのに時間がかかりすぎて
放心状態な私。
「わかった?広瀬くんっ?♪」
「何やってんだよ!水野、意識 飛びかけてんぞ!」
「ヘタレなあなたに教えてあげただけじゃない。ね?由莉?」
「ソ、ソウダヨネ……アハハハ……」
今のってキ、キス………?なのかなぁ?
え?何で?
有紗どうしたの…?
……いや、でもっ、口にはされてないし……。
勇也の角度からは、絶対キスしたように見えてるよね…。
どう?と、勝ち誇ったみたいな顔をしてる有紗を見て、
勇也はイラついたようにため息をつく。
「……水野の奪ってんじゃねぇよ」
「え?」
勇也がボソッと言った言葉が聞こえなくて、
聞き返すと、
勇也は「なんでもない」と言って、私にプリントを渡してきた。
「明日 テストなんだし、これやっといて?」
「う、うん!」
優しく微笑みかける勇也に、胸が高鳴って、私も笑って返事をする。
「よしよし」
「っ///」
勇也はそう言うと私の頭をポンポンと叩き────
「伊集院は………とりあえず廊下に来いよ?」
今まで聞いたことのないような、
低い声でそう言った。
「ふふっ。ほんと、面白いわね」
だけど、有紗はなぜか楽しそう。
そして、2人は教室を出ていってしまった。
