「───嘘……。」
《可愛い》。
そう、勇也ははっきりと言った。
頭が真っ白になって、何も考えられない。
信じられない。
勇也が………、私に?
かぁぁあと顔が赤くなる。
頭がゆらゆらする。
このまま、気を失っちゃいそう。
好きな人に、可愛いって言われるのって…、
こんなに嬉しいものなんだ。
「ってか、伊集院ちょっといい?」
勇也は少し頬を赤く染めて、若干イライラした様子で言う。
「えー、もう何よー?」
「いいから。」
「はぁ……、わかったから。」
ったく、女々しいやつめ。と呟きながら有紗は言う。
「とりあえず、廊下出て。」
「はいはい!」
そして、有紗と勇也は、ボーッとしている私を、置いて廊下に向かう。
有紗は私の横を通り過ぎる時、くすっと笑ってこう言った。
「由莉、良かったわね♪
───『可愛い』わよ?」
わざと、可愛いという言葉を強調する有紗。
そして、横目で私にウインクして、教室を後にした。
何だろう………、この、台風が通り過ぎ去った感。
ポツン、と1人取り残された私。
机の前で、たださっき起こった事を考えながら
立ちすくむ。
