呆然としている私をよそに、勇也は私の手を引きながら歩いていく。







手、最後に繋いだのいつだっけ…。

デートも、最後にしたのはいつ…?




…またあの頃みたいに戻りたいよ。




でも、そんな願いも叶わないんだ──。









「ゆ、勇也…、お願いっ、離して…!」



私は必死に勇也の手をほどこうとする。





──手を離して、お願い。


──まだ、繋いでいたい。





そんな正反対の思いが、私の胸の中に生まれる。







離してほしいけど、離してほしくない。





離してくれないと、今度はもっと大変なことになりそうで。



…でも、離したら本当にもう2度と戻れなくなりそうで。







──選択肢は2つに1つ。



どちらの道を選んだとしても、引き返せなくなることくらいわかってる。








だけど、このままだと外に出てしまう。




…監視されている、外に。





それだけは、絶対にダメ。



…だって、勇也にまで迷惑かけることになるんだから。











「なんで由莉は、離してほしいの?」



ふいに勇也が足を止めて、こちらも振り返らずにそう聞く。





「それは…っ」




…だけど私は何にも答えることができない。





……言えないよ、そんなの。














すると、繋がれている手に、ギュッと強い力が入った。


そして勇也は、落ち着いた声で話し出す。










「大丈夫、心配しなくていいよ。…ちゃんと、話してあるから。」

「え…?」







話してあるって…、何を?



何が大丈夫、なの?



──勇也は、何の話をしているの…?










混乱している私に、勇也は私の方を振り返り、悲しそうに笑って。











「だから……、“最後”に俺の願いも聞いて…?」







──ねぇ、勇也。







“最後”って………、何?