「…ったぁ…」


ぶつかった拍子にどんっと尻もちをついてしまう。


散らばる私の鞄の中身。



「すいません、大丈夫ですか!?」

その人は慌てて、私に駆け寄る。



「いえ、全然…って、あ。」



大丈夫です、と言おうとして上を向いた時。





「え?…あ。」


その人も私の顔を見て。





「魁星くん?!」

「momoちゃん…だよね?」


夏休み以来…かな?


久しぶりに会った魁星くんは、髪の色が明るくなっていて。


…雰囲気 変わったなぁ。





魁星くんはとても驚いたように、目を見開く。




そんなに驚くことかな…?と、首をかしげて魁星くんを見ていると、
ハッとしたように我に返って。



「…ごめん!急いでたよね?」

「あっ!う、うん!!」



いけない…‼︎

勇也を待たせてるんだっ!



魁星くんは私の中身を一緒に拾ってくれる。


すると、魁星くんはふいに手を止めて。



「今から、どこか行くの?」

「う、ん…」

「もしかして…デート?」



突然すぎる魁星くんの質問にびっくりしすぎて、
私も思わず手を止める。




「え、っと……うん。」


うわ〜っ!

何か…人に言うのって恥ずかしい‼︎



私がそう言うと、魁星くんは「そっか…」と力なく笑って。




そして、はい、とバッグを渡してくれた。



「遅れたらダメだよ!…楽しんで。」

「うん!ごめんね、ありがとう!」


魁星くんが笑顔で送り出してくれたから
私は魁星くんに手を振る。



実はもう遅れてるんだけど…。

待ってくれてるのかもわからないんだけど…。




──って言うのは私が悲しいから言わないことにしよう。うん。



それより、早く勇也の所に行かなきゃ。




…そして、私はまた走り出す。







「アイツと…うまくいったんだ…」



──魁星くんのその言葉は、誰にも届かずに消えた。





…そんなこと、知るはずもなく。











「っはぁ…はぁっ……」


──遅い。



カップルで街が溢れている夜の街。


私はただひたすら走る。



すれ違う人はみんな楽しそうに話していて、私の方なんて見ない。





……いいな。

私も早く勇也に会いたい。





勇也、もう帰ってるかな…。


でも、帰っててもおかしくないもんね…。







「…もうっ」



何で私の足はこんなに遅いの…?!

もっと早く走れたらいいのに。





会いたい。会いたい。


そんな気持ちばかり募っていく。





途中で歩いたりもしながらも
30分くらい経って。






待ち合わせの場所までついた。







勇也の姿は、見つからない。




「勇也…どこ…っ?」