「じゃ、邪魔者は先 行っとくね~」

「あ、有紗?!」


ばいばーいと、手を振りながら、有紗はさっさと行ってしまった。



「……」

「……」


何だか気まずい空気になってしまった、
私たち2人を残したまま。





さっきの有紗の衝撃発言で、2人とも顔が赤くなって、動かない。




「俺らも…、そろそろ行く?」


しばらくそうしていると、勇也の方から声をかけてくれて、
「そうだね…」と、私たちも歩き出した。




肩がぶつかりそうなくらいの距離。



一歩廊下に出るだけで、
わっと響きわたる黄色い声。



もちろん、それは全部 勇也に向けられたもの。




もう、それはそれはすごくて
いつも周りから見ているだけだったけど、全然違う。





す、すごいなぁ…勇也は。


毎朝 こんなに囲まれながら教室に行くんだぁ…。



教室の窓から目をハートにしながら
顔をのぞかせている女子。



それに対して、特に目を向けるわけでもなく、普通な勇也。






私は、気付かれないように、チラっと勇也の横顔を見て、
本当に私たち付き合ってるんだよね…?
とか考えていたら……







「ひ・ろ・せくーんっ♡」

「わっ…!」







───ドン!!!



何やら謎の物体に体当たりされ、私は勇也から離れる。



突然訪れた衝撃に、私は背中をさすった。





……い、痛い~。




ハッと勇也の方を見ると、
化粧もバッチリでイケている感じの子たちが、勇也の周りを取り囲んでいた。




…多分、わざとぶつかって、私と勇也の間に割り込んだんだろう。






「ねーねー、今日 遊べる~?」
「勉強 教えてくれな~いっ?」





と、その子達は私なんて眼中にもないのか、
キャピキャピと勇也に話しかける。





ちょっとはムっとするけど、あの中に入っていく勇気なんて、あるわけなく。



「ぅ…」



私は外から眺めているだけだった。




わ、私が勇也の隣を歩いてたのに…!



そう思っていたら、勇也はふいに浅くため息をついて。






「あのさ、これからこういうことやめて?」



そう、キツめに言った。




「えっ」



いつも優しい勇也が初めて口にした言葉に、
周りを取り囲んでいた女子をはじめ、教室の中から見ている子たちもびっくりしている。




…もちろん、私だって。





「な、んで……?」



ある1人の子が、恐る恐る勇也に聞くと、
勇也は私をチラっと見て。


そして、そのまま女子を掻き分け、私の方へと向かってくる。





「え……」




そう私が声を漏らした時にはもう、
手を引かれ、ポスッと勇也の腕の中に収まっていて。







「俺はこいつのモノだから、ね?」





……そう、私の顔の横で、甘くつぶやいた。