「へぇー…、昨日だけでそんな出来事があったのね…」


有紗は、少し驚きながらも、黙って私の話を聞いていた。



話しているうちに、同じ学校の人もチラホラと見え始め、
あまり勇也の名前を出さないようにした。



…本当はみんなに言いふらしちゃいたいくらい嬉しいんだけどね!


そして、気付けばもう、校門を通過していて。






そのまま、有紗と話しながら靴箱へ向かうと、有紗は「あっ」と、声をあげた。



「?」


何だろう……と、有紗が見ている方へと顔を向ける。



「ーっ……!!」





そう。

私たちが向かっている靴箱には、勇也がいた。



いつもと変わらず、少しだるそうな勇也。




私たちが見ていると、勇也は視線を感じたのか、ふっとこちらへ顔を向けた。



その動作が、とてもスローモーションに見えて、
勇也と目があった瞬間、うるさいくらいに心臓が動き出す。




「おはよう、由莉」

勇也は私を見るなり、優しく笑ってそう言った。


「お、おはよっ!」



私は下を向いたまま、勇也の所へと駆け寄る。




勇也の顔、直視できないよ~……。


それに、" 由莉 ”って……。


考えるだけで顔がボッと赤くなって、心がくすぐられる。





「聞いたわよ、広瀬?」



すると、有紗はプッと口元を手で押え、ニヤニヤしながら近づいてきた。



「ん。伊集院には世話になったわ。」


勇也は照れくさそうにに頭を掻きながら、そう言った。


……ん?世話になったってどういうことだろう?




「うふふ…、私ったら恋のキューピットね♪」

「いや、もうほんとに。ありがとな。」

「2人とも、うじうじしちゃって…、どれだけ大変だったか…」




と、私を挟んで会話している、勇也と有紗。


あのー……、これって……



「有紗は勇也の好きな人も知ってたの?」

「ん?当たり前じゃない。」


え……。



「えぇーっ?!!」



びっくりしすぎて、思わず大きな声で叫んでしまう私。



嘘?!

有紗って、知ってたの?!


「そんなの、広瀬見てたらすぐにわかるし、広瀬からいろんな相談もされ……」

「ちょっ!伊集院、言うなっ!!!」


有紗がそう言いかけた上から、私に聞こえないように慌てて言う、勇也。



顔が真っ赤で、眉を寄せて怒っていた。



そんな勇也に対して、「言っちゃダメだった?」と、いじわるそうに笑っている有紗。




そのやりとりを見て、
勇也って本当に私のこと好きだったんだ…。
と実感し、また恥ずかしくなる。