「っ………くそっ……」



階段を下り、学校を出てからかれこれ10分近く。


「どこにいんだよ……」


水野は見つかっていない。



「はぁ…っ」


もう、ずっと走ってるし。

さすがに…しんどいし。


つーか、見つからなかった時、この鞄はどうしたらいいんだよ…。



そう思いつつ、突き当たりの角まで軽く走る。



──今 わかっているのは、
水野は明らかに俺から逃げてるって事だけ。


だけど、その理由がわからない。




何で、あの時 逃げたの?

どうして…泣いてたんだよ。

やっぱり神埼の言ってた通りなのか?




……聞きたいことはいっぱいあるんだ。



そして、角を曲がろうと右へと目をやった時。






「……いた。」




──水野の姿が見えた。



多分30mくらい先。

水野も疲れていたのか、肩で息をしながら、ゆっくり歩いていて。




「~~…水野!!!」



その後ろ姿を見たとき、思わず走り出していて。


水野は、ビクッと俺の声に反応し、恐る恐る後ろを振り返るとまた走り出してしまった。




「あぁ、もう!!」


気付かれないように後ろからそーっと行くべきだった!


そうしたら、こんな走らなくてすむのに。


心の中で後悔しながらも、俺は水野を追いかける。



──…いつか、遠くへ離れていくんじゃないかと思ってた。


第一、俺なんかが水野に釣り合うのかって。



こんな…、世間で話題のモデルに。


『諦めるなら、今のうちだ。』って、何回も自分に言い聞かせて。



でも……


” おはよっ! "



朝、水野がそう言うだけで、俺の心はまた水野に持って行かれて。



…諦めるなんて、無理だ。


もうこうなったら、俺が野を守ってやる。



「あと少し…っ!!」



──…なのに君は、俺からどんどん逃げて。



俺はできる限り全力で走って、水野との距離を縮めていた。



あと3mくらい。


俺は、鞄を待っていない方の手を精一杯伸ばした。







──パシッ。




「はぁっ、はぁっ……!」

「~~っ!!!」




水野は、俺に腕を掴まれて、動きを止める。



…あぁ。良かった。





やっと──






「やっと…捕まえた。」





──もう逃げないで…。







*勇也side END*