「すごいね、広瀬の人気。」


伊集院はそう言いながら座る。


「…そりゃどうも。」


俺も伊集院の隣に座った。



……そんないい気はしないけど。





すると、伊集院は神妙な面持ちでこう言った。





「広瀬、知ってるの?──由莉のこと。」

「水野…?」


…水野、何かあったのか?



伊集院は俺から視線を逸らし、


「……由莉を狙ってる男子が爆発しているわ。」

と、何やら意味がわからない発言をした。


「はぁ?」

「由莉、告白され放題よ?」

「何で…」



いや、前から水野はモテていたけど。


…そういえば、前に告られてるの見たな…。


それが増えてきているってことか?




「多分だけど…、由莉は広瀬と付き合っているってみんな思っていたんじゃない?」

「付き合ってるって…」

「だけど、あんたは女子に囲まれて由莉は何のガードもないわけ。」

「っ!」



…何だよ、それ。


俺が知らない間に、水野は色んなやつに狙われるって?



「…ま、好きならしっかりしなさいよ?」



じゃーね。とそれだけ言って、伊集院は屋上を出ていった。




誰もいなくなった屋上で、俺はどうしようもないイライラした気持ちに襲われる。



「くそっ………」



水野がそんなことになっているなんて、考えていなかった。


そして、青く綺麗な空を見ながらふと思う。





──あぁ、水野と喋りたい。



これで何日目だ…?

いつから喋らなくなった?




男子も、勝手に水野に近づいてんじゃねぇ…。

──…水野も、簡単に着いていくなよ…。



男は何をし出すかわからない。

その事を絶対、水野はわかっていない。




…周りの女子なんてどうでもいい。

俺は、水野がいたらいい。




なのに、今の俺は水野の近くに行けない。




──…そんなやるせない思いが募っていた時、
俺はついにやってしまった。





──「関係ないじゃん!!」

水野が授業をサボった時、
何をしていたのか聞いても、水野は答えない。



…何で答えてくれないの。

…やっぱり男に呼び出されていたんだ?



そんな不安に覆い尽くされて、水野が泣きそうになっているのを知りながら、
俺は詰め寄ったんだ。


そして、突き放された。





──あぁ、俺は何をしているんだろう。


水野は、俺のものでも何でもない。

水野からしたら、俺はただの友達だ。



なのに…、勝手に嫉妬して。




もう、まともに話せる自信がない。


俺は、その後、水野と一言も話さず、家へ帰った。



いつもついて来る女子にも「今日は、ついて来ないで。」そう、初めて強く言った。