10月の半ば。


まだ残暑が残っているけど、
徐々に涼しくなってきた頃。









───「広瀬と付き合ってるの?」



「……。」



はい、出ました恒例の質問。




これで何回目なんだろう…。




「……付き合ってないよ。」



昼休み、一人でジュースを買っていると、
突然 男子に声をかけられた私。




確か、隣のクラスの小泉くん。



前に一度、同じクラスになって、何回か話したりもしたっけ。





私がそう言うと、ほっと安心したような表情を浮かべ、
口をぎゅっと結んだ。







──こう来れば、もう嫌でもわかる。





「えっと……、好きです。付き合って下さい。」





……はい。出ました、恒例の告白。





ここ3日、こんな事が少なくとも10回以上あった。



……さすがに、そこまでされると、
私でも薄々 気付いてくるもので。


ほんと、慣れって怖いなぁ……。





「ごめんなさい……。」




私は、いつもこうやって頭を下げて謝る。


「謝らなくていいよ…!じゃ。」


そう言って、彼はこの場を去っていく。







「……はぁ」



彼の背中を見て少しの罪悪感を抱えながら、小さく声を零す。






……気持ちは嬉しいんだけど、ね。うん。

でも、何でこんな私を好きになってくれるのかわからない。

それに、何でみんな告白する時に
「広瀬と付き合ってる?」って言うんだろう。







…そして。



「水野さーん」




こうやって、私と勇也が付き合ってるか聞いてくるのは、
男子だけではない。




「どうしたの?」



何となく嫌な予感はするけど、一応聞いてみる。



「えっと…、私、広瀬くんの事好きなんだけどぉ……、
──水野さんって、広瀬くんと付き合ってるの?」


その子は、上目遣いで私の顔色をうかがっている。



──やっぱり。

私の予感は見事的中しちゃったよ…。





「………あ、はは。付き合ってないよ?」




付き合えるなら、付き合いたけどね。


「そうなんだ!!良かったぁ……。」


その子は、両手を胸の前で合わせて微笑んだ。





……この子、可愛いなぁ。天使みたい。